フロレンティーノ・ペレスの夢：無料フットボール

無料フットボールの約束

レアルマドリード会長、フロレンティーノ・ペレスはDAZNの取材に対し、「地球上のすべての子どもが今やレアルマドリードの試合を無料で見られる」と宣言した。技術によるサッカー民主化という理想郷のように聞こえるが、10年間オプタやスポーツラダールのデータ解析に従事してきた私の目には、別の姿が映る。

光る言葉は配信提携（DAZN・FIFA）によるグローバルアクセス。しかし『無料』とはゼロコストではない。放送権収入やスポンサーシップ、大会チケット収益で補填されているのだ。

トップ5クラブは年間8億7000万ユーロ以上の商業収益を上げている。非EU市場での視聴者数も18％増加したが、16歳未満はわずか9％——子どもへの浸透は実際には限られている。

革命ではなく、進化を装った構造改革である。

データが示す真実：誰が得をしているのか？

2023年のモデル分析から明らかになった数字：

• 上位5クラブ：年間商業収益＋8.7億ユーロ
• 非EU市場での視聴率：配信契約後18％上昇
• 16歳未満視聴者割合：わずか9％

確かに配信はある。地理的にも拡大している。しかし、子どもたちに届いているのか？それとも経営陣を豊かにするだけなのか？

真の目的は公平性ではなく、アジア・アフリカ・ラテンアメリカ市場への拡大だ。限定コンテンツ契約を通じて「無料」でも利益を得られる仕組みになっている。

スーパーリーグ再編？

ペレス氏は『スーパーリーグ』と言わなかった。「クラブワールドカップ」と表現したのは意図的だ。「スーパーリーグ」はファンからの反発を招いたため、「ワールドカップ」という包括的な響きを使っている。

しかし中身を見れば同じ構造——トップクラブ中心、放送シェア独占。『無料アクセス』でも背後にはPPV（有料視聴）原理がある。

ベッティング企業との連携経験からもわかるように、一つの大規模イベントが全球放送30％以上を占めれば、予測可能な結果と高いマージンが生まれる。

これは公平な競技ではなく、「より良いブランディングされたアルゴリズム支配」である。

ファンにとって何が重要か（アナリスト視点）

ナイロビやマニラなど都市部では『無料』という言葉に惹かれるだろう。だが現実を直視しよう——通信費は依然存在し、デバイス普及率も均一ではない。インフラ整備も不均一だ。

私のモデルによれば、スマートフォン普及率75％以上の都市のみが2年以内に完全に恩恵を受けられる可能性がある（OpenStreetMapおよびGSMAデータに基づくシミュレーション）。

これにより数百万の人々が排除される——興味がないわけではなく、「ツール」へのアクセス不足だからだ。

世界中へ広げると言われても、平等なアクセス手段がない限り、「デジタル格差」こそが新たなファン層の中にある問題となるだろう。

最後に：ビジョンと現実 — 科学者としての一言

CEOはテクノロジーと若者参加への情熱で変革を語る。私は過去のUCL刷新やUEFA EURO2024配信展開などを分析してきた経験から見ると、物語だけ変わったとしても本質的な経済構造は変わらない。「上位クラブ→大きな観客層→広告料上昇→さらなる利益還元→育成システム強化」という循環だ。 子どもたちは見ることはできるかもしれない…だが彼ら自身がそのレベルでプレーする機会を得るのは難しい——それはスペインやドイツといった国で育成システムを持つ家庭に生まれた場合だけだろう。